雰囲気にあった壁紙の選び方~色と模様による心理効果の実験より~

本記事は「より優れた空間を創出するため、壁紙の配色、色の数と模様をもとに、部屋の雰囲気にあった壁紙のデザイン手法を明らかにする」実験(日本色彩学会第50回全国大会[東京]ʼ19 発表論文集 「室内空間の雰囲気に適した壁紙−壁紙の色と模様による心理効果の実験−」)の結果を紹介したものです。

壁紙が人に与える心理効果を消費者視点から調査したものになります。人間が壁紙から受け取る印象、どんな壁紙がどんな空間にふさわしいか、女性と男性の壁紙から受け取る印象の違いなどを理解することで、空間にあった壁紙選びの一助になりますと幸いです。

※壁紙を機能性の面から選ぶ場合は、「機能性壁紙の種類と効果」の記事をご参照ください。

こちらは、実験の概要を3分にまとめた動画です。

実験結果のまとめ

  • 女性と男性で壁紙に対する印象は違う
  • 大人っぽいイメージを作りたい部屋に対しては、無彩色(黒と白と、その中間のグレー(いわゆるモノトーン))がふさわいしい
  • 暖かく、明るく、派手な、柔らかく、親やすいイメージにはY系色※1がふさわしい
  • 具象的な模様※2はより、高級、大人っぽく感じられる
  • 円の幾何学模様※3は比較的柔らかく、親しみやすいイメージ
  • 「高級な〜安価な」「強気な〜弱気な」などに 男性と女性との差があった。空間のターゲットが女性の場合、男性の場合と区別できる場合には男女の違いを壁紙選びで考慮するべき

※1:色を正確に表示することを目的とした表色系。下記画像の中で黄色がベースの5YR、10YR、5Y、10Y、5GY、10GYがY系色

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

※2 具象的な模様・・・身の回りにある植物や動物、風景などをデザイン化した模様
※3 具象的な模様・・・多角形、円、直線など単純な図形を基に構成した抽象的な連続模様

印象評価実験の方法

実験用の壁紙はL社の壁紙カタログ2017−2020版の中で現実によく使われている色相Y系、B系、N系の色をベース色として下記図のとおり18枚制作された。

実験用18枚の図

これを900センチ×600センチの大きさに印刷し、1枚ずつ被験者に見せ、「この壁紙が部屋の4面に使われているとして、部屋の雰囲気にあうかどうか」を評価させた。

評価項目は形容詞対と行動パターンの2つに分けた。

形容詞対・・・「安価なー高級な」「子供っぽいー大人っぽい」などの9対に対して7段階評価。

評価項目の9対の形容詞対

行動パターン・・・「1人で本を読んだり音楽を聴いたりする部屋」「軽食を楽しんだり勉強したりするカフェ」などの10項目を5段階で評価。

評価項目の 10 種類の行動パターン

被験者は、筑波大学の学生20名、内訳は男性10名、女性10名。

印象評価実験の結果

評価項目に対する有意差があったデザイン手法を下記表に示す。
性別の有意差があったため、結果は男女分けて分析された。

有意差があった項目

まず、女性・男性ともに「色数」で有意差が出る項目が少ないことがわかる。男女ともに「派手なー地味な」、女性は「強気なー弱気な」の項目でのみ有意差があった。

ベース色、模様については男女の差があるが多くの項目で有意差があることがわかる。
ということで、有意差が出た項目について細かく見ていく。

女性の実験データの分析

色の面からの分析

N系ベース色
・「高級感」「大人っぽい」「落ち着いた」感じ
・「毎週の仕事の進捗を報告をしたり、打ち合わせをする会議室のオフィス」にふさわしい

赤枠内、N系のベース色

Y系ベース色
・「明るい」「派手な」などのイメージ
・「軽食を楽しんだり勉強したりするカフェ」「家族と食事するなどワイワイ楽しむ部屋」「友人と食事するなどワイワイ楽しむ部屋」「ガヤガヤした騒がしい雰囲気の部屋」「友人や家族も含む不特定多数の人と過ごす部屋」にふさわしい

赤枠内、Y系のベース色

色数の面から分析

・壁紙に使われている色が大きくなると、より「派手な」「強気な」イメージ

赤枠内、「03B3と03B7」「03N3と03N3」「03Y3と03Y7」ではそれぞれ右側の色数が多い壁紙の方がより派手・強気な印象を与えていた

模様の面から分析

・具象的な模様は「高級感」「大人っぽい」「落ち着いた」
・幾何学の円を使った壁紙は「柔らかい」「親やすい」

赤枠内は具象的な模様、青枠内は幾何学の円模様を使った壁紙

男性の実験データの分析

色の面から分析

N系のベース色
・「大人っぽい」感じ
・「毎週の仕事の進捗報告をしたり、打合せをするオフィスの会議室」「静かで落ち着いた雰囲気の部屋」「静かで落ち着いた雰囲気の一人で過ごす部屋」にふさわしい

赤枠内、N系のベース色

Y系のベース色
・「明るい」「派手な」「暖かい」などのイメージ
・「朝食を楽しんだり勉強したりするカフェ」「家族と食事するなどくつろぐ部屋」「友人と食事するなどワイワイ楽しむ部屋」「ガヤガヤした騒がしい雰囲気の部屋」「友人や家族も含む不特定多数の人と過ごす部屋」

赤枠内、Y系のベース色

色数の面の分析

・壁紙に使われている色の数が多くなると、より派手なイメージ

赤枠内、「03B3と03B7」「03N3と03N3」「03Y3と03Y7」ではそれぞれ右側の色数が多い壁紙の方がより派手・強気な印象を与えていた

模様の面からの分析

・具象的な模様は「高級感」「大人っぽい」感じ、「大学やオフィスの、自由にミーティングなどもできるフリースペース」にふさわしい
・幾何学の円を使った壁紙は「柔らかい」「親やすい」

赤枠内は具象的な模様、青枠内は幾何学の円模様を使った壁紙

男女の実験データの比較

上記で紹介した、印象評価の結果を女性・男性で比較すると以下のようになる。

色について

N系のベース色

女性男性
高級感
大人っぽい大人っぽい
落ち着いた
男女でのN系ベース色に対する印象の違い(形容詞)

女性男性
毎週の仕事の進捗を報告をしたり、打ち合わせをする会議室のオフィス毎週の仕事の進捗報告をしたり、打合せをするオフィスの会議室
静かで落ち着いた雰囲気の部屋
静かで落ち着いた雰囲気の一人で過ごす部屋
男女でのN系ベース色に対する印象の違い(行動パターン)

Y系のベース色

女性男性
明るい明るい
派手な
暖かい
男女でのY系ベース色に対する印象の違い(形容詞)

女性男性
軽食を楽しんだり勉強したりするカフェ軽食を楽しんだり勉強したりするカフェ
家族と食事するなどワイワイ楽しむ部屋家族と食事するなどワイワイ楽しむ部屋
友人と食事するなどワイワイ楽しむ部屋友人と食事するなどワイワイ楽しむ部屋
ガヤガヤした騒がしい雰囲気の部屋ガヤガヤした騒がしい雰囲気の部屋
友人や家族も含む不特定多数の人と過ごす部屋友人や家族も含む不特定多数の人と過ごす部屋
男女でのY系ベース色に対する印象の違い(行動パターン)。有意差は見られない。

色数について

女性男性
壁紙に使われている色の数が大きくなると、より「派手な」「強気な」イメージ壁紙に使われている色 の数が大きくなると、より「派手な」イメージ
男女での色数に対する印象の違い

模様について

具象的な模様

女性男性
高級感高級感
大人っぽい大人っぽい
落ち着いた
男女での具象的な模様に対する印象の違い(形容詞)

女性男性
大学やオフィスの、自由にミーティングなどもできるフリースペース
男女での具象的な模様に対する印象の違い(行動パターン)

幾何学の円模様

女性男性
柔らかい柔らかい
親しみやすい親しみやすい
男女の幾何学の円模様に対する印象の違い

以上、「壁紙の色と模様による心理効果の実験」についての紹介でした。目的や好みにあった空間デザインの手法として参考にしていただけますと幸いです。